まだ、君を愛してる.doc
愛花といる時、どんな時でも心臓が歌い、笑っていた。それがないのだ。
それに気づくと涙が零れた。
「・・・だ、大丈夫ですか?」
「あ、うん。ごめん、気にしないで。」
そうは言われても、大の男が急に泣き出したのだ。気にしない方がおかしい。
「は、はい。」
それから五分くらいか、やっと落ち着いてきた。そこで僕は彼女に何者かから送られてきた写真を見せた。
「これ、見て。」
「これですか?」
新島さんは携帯を手に取り、液晶を確認した。そこに映っている写真。それは男女がホテルに消えていく写真。つまりは自分が撮った写真。ただ、これを送ったのが自分だとは知られるわけにはいかない。これをしたのが自分だとバレれば、ここに来た目的は確実に果たせないからだ。
「男と女の人。ホテルに入るってところですよね?」
「そう。新島さんは一度しか会ってないから、だから覚えていないかもしれないけど、その女の人は元嫁。」
覚えている。覚えているからこそ、この写真が撮れたのだ。しかし、今それはどうでもいい。それよりも気になる言葉、“元嫁”の一言。もしかして、自分が思った通りに事が進んでいるのではないか。期待に胸が膨らむ。
「あの・・・」
「何?」
「今、元嫁って・・・。どう言う事ですか?」
「・・・」
沈黙の空気。指一つ動かすだけでも、何か重さを感じる。
「・・・うーん。」
重い空気がさらに重くなる。
「・・・離婚・・・した。」
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