まだ、君を愛してる.doc
うまくいった。そう思った。新島さんはその場で立ち上がり、喜びを露わにしたかっただろう。しかし、それを僕に対して振る舞うのは、自分が何をしたのかをもらしてしまうのと同義だ。それだけは避けたい。
「・・・離婚ですか?」
「う、うん。」
「どうして?あんなに仲良かったじゃないですか。」
「そうだね、仲良かった・・・」
そこで一呼吸おいた。
「けどさ、誰が送ってきたか知らないが、この写真見て、問い詰めないなんてあり得ない。だから、聞いたんだ。そうしたら、どんな答えが返ってきたと思う?」
「さ、さぁ・・・」
「ずっと、ずっとこうして会っていたって。あの頃、気づけば良かったんだ。」
ため息と共にうつむいた。
「何をですか?」
「こう、あるでしょ。誰かと比較されているような感覚。よく付き合ったばかりの時に、元カノが・・・的な話が出てケンカになったりするあれ。」
「ありますね。」
「元嫁もさ、わりとあったんだ。でも、結婚までして、まさかこんな話さ・・・想像できないでしょ・・・?」
とにかく同意して欲しかった。本来なら彼女に話すべき事ではない。けど、自分の中にしまい込んだままにするのは、これ以上無理だった。
「そ、そうですね。」
これは完全に自分に流れが向いた。さりげない同意。僕は相当に傷ついている。このタイミングなら、きっと僕を落とせるはずだ。彼女は意を決し、それの表れとして、大きく息を吸った。
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