まだ、君を愛してる.doc
「かしこまりました。」
淡々とした口調が、いつまでも愛花に突き刺さる。そして、追い討ちをかけるように、柏の言葉が突き刺さる。
「一条さんが大盛り頼むなんて意外だなぁ。」
「あ、違うんです。間違いと言うか、あの、その・・・」
「あはは・・・。嘘、嘘。よくわかってなかったでしょ?なんか、取って付けたような言い方だったし。あのおばちゃんウェイトレスにビビったかな?」
「そ、それでいいです・・・」
愛花は頬を染めた。
「かわいいなぁ。思わず口説きたくなっちゃうよ。」
これまでの人生で、愛花は男性経験がほとんどない。だから、冗談で“口説く”とか言われても、冗談に取れないのだ。昼間、それもこんな人の多いファミレスで口説かれるなんて、テレビの中の世界の話で、現実に起き得るなんて、思いもしない。
赤らんだ頬は、痛みを覚えるほどまでに紅潮し、俯く以外に手だてはない。
「お、おーい。一条さん?」
「・・・は、はい。」
「そんな本気にしないでよ。いくら俺だって、こんなところで口説いたりしないって。」
「そ、そうなんですか?」
「まさか、本気だと思ってた?」
「あ、はい・・・。違うんですか?」
「うん、違う。」
それを聞いた途端に、みるみるうちに紅潮が引いていく。その赤が鮮やかすぎて、今は青ざめているようにすら見える。
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