君というヒカリ。



ココアを飲みながら外を見てるとさっきのムカムカする気持ちはどこかに行ってしまっていた。




ただ、窓に映る、あの桜井湊って奴がちらちらあたしの見ているのが分かる。


でもあたしはそんなことおかまいなしでココアを少しずつ喉に流していった…。




いつしか冷えきっていた体も温もりを取り戻し、あたしの気持ちも晴れていた。




久々にこんな温かい気持ちになれたなあ。

ココアって意外とおいしいんだ…。




小さい頃、よく家族で行っていたカフェのココアがすごく美味しかった。


お母さんも、お父さんも、妹の咲(サキ)も、
みんな幸せそうな笑顔をして通ってた。




あたし、まだあの味忘れてないんだよね…。



もう、4人であのカフェに行くことはない。
家族も、今のあたしにはいないんだ。




「あっ……」


気づくとコップの中のココアはなくなっていた。




「あたしたちの絆も、
こんなモロいもんだったんだね。」





無言で席を立ち、
店を出た。



さっきの店員なんて、
もうすっかり忘れていた。





帰る家も無く、
あたしはただボーっとラブホが集結してる通りを歩いた。




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