恋愛模様・番外編-"あいみ"として-
「……なぁ、お前」
新しい担任の話は長くて、すごく退屈だ。
春休みの試合での反省とか、今度の試合用のメニューとかを考えていて、
私は周りの話を聞く体制には全くなっていなかった。
だから、
「なぁ、おいっ」
後ろの席から声をかけてくる存在に気づいたのは、
「お前だよ、山村っ」
しばらく経ってからのことだった。
「……なに……?」
ゆっくり振り向くと、なんかいかにも遊んでそーな、
だからといって嫌な感じなんてしない、ピアスをたくさん着けた男の子が私をシャーペンでつつこうとしていた。
「俺、済藤孝太郎。"コタ"って呼んでね」
そう言ってニコッてした。
「あ、うん。よろしく……」
「お前って、」
「……えっ?」
「すげぇ可愛いよな」
「……はっ?」
いきなり、しかもSHR中にそんなことを言われたもんだから、
私がそう言われることに免疫がないってのもあって、ただただ口を開けてポカンとすることしかできない。
それに気づいたのか、華菜恵ちゃんが少し離れた席から心配そうにこっちを見ているのが横目でわかった。
すぐに華菜恵ちゃんに、
大丈夫だよ、って意味で首を振り、この"コタ"とかいう人に向き直った。
「なに、言い出すの……」
「あっちの、真鍋華菜恵……だっけ?あの子も可愛いよな。
男受けよさそーな感じ?でも俺は断然お前だな」
「……………は?
……えーと…………
………………は?」