日常的幸福論~もうひとつの話~
飛鳥がベッドに寝ているあたしの手をギュッと握ってくる。


不思議…飛鳥の手ってあったかくて落ち着く。


「なにかあったか?」


心配そうにあたしの顔を覗き込む飛鳥。


「実はね…」


そしてあたしはポツリポツリと、今日喫茶店で会った男性の話を口にした。


「その人、すごく寂しそうな顔をしてたの。後悔してるって言ってた…なのにあたし何も言えなかった…」


「ふぅん。自ら手を離した、ね」


飛鳥はあたしと手を繋いでいない逆の手をジッと見つめる。


「飛鳥?」


「あぁ、悪い悪い。…沙依、俺思うんだけどさ、きっと縁とか絆って目に見えないものだから不安になったりもするんだと思う。でもさ、そういうのって絶対に切れたりしないんだよ。絶対に繋がってる。俺は…そう信じたい」


「ふふっ、飛鳥がそう言うならあたしも信じる」


「元気出たか?」


「うん!ねぇ、飛鳥。飛鳥の言う絆ってあたしにも繋がってる?」


わかってるけどわざとらしく聞くと飛鳥はあたしに軽くデコピンをしてかた。


「おやすみ」


「もぅ!ねぇ、飛鳥ってば!」


ねぇ、飛鳥。あたしの絆はちゃんと飛鳥に繋がってるよ。
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