日常的幸福論～もうひとつの話～
「そうか。お嬢さんみたいな可愛い子の作るごはんなんて、旦那さんは幸せものだろうね」


「いえっ、うちなんか主人の方が料理が上手ですから…ところで、こんな、ところで何してるんですか？」


あたしがそう尋ねると男性はしばらく沈黙したままだった。


「すみません…いきなり変なこと聞いてっ「会いに、」


わたしの言葉を遮るように話はじめた男性。


「会いに行こうと思って」


誰に？なんて、聞かなくてもわかった。


この人が自ら手を離してしまったという相手だ。


「この近くに住んでいるんだ。けれど、もうここ何年も会っていない。アイツが一番大変なときに側で支えてやれなかった。今更会いに行くのは虫が良すぎるか、と…ここで悩んでいたとこなんだ」


やっぱり影を落として寂しそうな顔を見せる男性を見て飛鳥の言葉が頭をよぎった。


「あのっ、あたしの主人が言っていたんですけど、縁や絆は目に見えないもので不安になるものだけど…絶対に切れないものだって！…だから大丈夫ですよ！」


「……ありがとう。お嬢さんの旦那さんは素敵な方だ」


「はい！」


そりゃあもう世界一！！！と心の中でそう叫んだ。
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