日常的幸福論～もうひとつの話～

飛鳥の自室におもいっきり扉を開けて入ると飛鳥はソファーに座りながら台本を読んでいた。


「なに？」


飛鳥があたしに向ける瞳は鋭いもので、一瞬怯んだけれどここで逃げる訳にもいかない。


「飛鳥は本当にこれで良かったの！？」


「なにが？」


「なにが、って…お父さんのことだよ！せっかく飛鳥に会いにきたのに、このままで良いの！？」


「うるさい」


「うるさいって…あたしは飛鳥のことを思って！」


そう言うと飛鳥にギロリと睨まれる。


「小さい頃から親の敷いたレールに乗っかって安泰な人生を歩んでる箱入り娘の沙依には俺の気持ちなんてわかんないよ」


初めて、飛鳥から拒絶をされた。


「もういい！飛鳥のバカ！」


悔しくて悲しくて、あたしは何も持たずに家を飛び出した。


涙が止まらなかった。