日常的幸福論~もうひとつの話~
勢いよく飛び出してきたはいいけど行く当てなんてなくて、あたしは久々に実家へと帰りいつの間にかリビングで寝こけていた。


「それで飛鳥と喧嘩したの?」


夜中に仕事から帰ってきた母親と遅いごはんを食べながら事の経緯を説明する。


「だって、飛鳥ってば意地っ張りなんだもん…」


「飛鳥のお父さんは穏やかな方だけど、いつどうなるかわからない業界だからね。そりゃあ親としては反対するわよ」


「えっ?お母さん、飛鳥のお父さんと会ったことあるの?」


「バカな子ね。自分の娘の嫁ぎ先である飛鳥の両親に挨拶なんて常識でしょ?」


…そりゃあそうでした。


「まぁしばらく離れてちょっと落ち着きなさい。飛鳥も映画の撮影で明日から台湾だから、良いタイミングでしょ」


そっか…明日から飛鳥と離れ離れになるんだ。


このままギクシャクしたままなんて、嫌だよ…。


沈んだ気持ちのままお風呂に入るけれど、シンとしたお風呂場にいたくなくてすぐに出てしまう。


お風呂から出るとお母さんが電話で話していて。


「うん。わかったわ…沙依に伝えておく。じゃ」


あたし?…ってことは電話の相手って、飛鳥!?
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