日常的幸福論~もうひとつの話~





稽古場には痛いくらいの沈黙が続いている。



「待ってください、長谷川さん!!そんなの納得できない!!俺に足りないものってなんですか!?」




「それは自分で考えなきゃ」




「俺は演技がしたい!!あんなにも人を動かす力のあることを俺もしたいんです!!演技なんてしたことないけど、めちゃめちゃ稽古頑張りますっ!!!だからっ!!!」





今までで一番大声を張ったときだった。




ピンポンピンポン。




と、今の空気に似つかわしくない音が聞こえた。




音の方を向くと長谷川さんはにっこり笑っていた。




「ごめんごめん、ちょっといじめすぎたね。間宮飛鳥。合格」




長谷川さんはおもちゃのピンポンブザーを鳴らしながらそう言った。




合格?ほんとに?




俺が?
< 39 / 124 >

この作品をシェア

pagetop