日常的幸福論~もうひとつの話~
稽古場には痛いくらいの沈黙が続いている。
「待ってください、長谷川さん!!そんなの納得できない!!俺に足りないものってなんですか!?」
「それは自分で考えなきゃ」
「俺は演技がしたい!!あんなにも人を動かす力のあることを俺もしたいんです!!演技なんてしたことないけど、めちゃめちゃ稽古頑張りますっ!!!だからっ!!!」
今までで一番大声を張ったときだった。
ピンポンピンポン。
と、今の空気に似つかわしくない音が聞こえた。
音の方を向くと長谷川さんはにっこり笑っていた。
「ごめんごめん、ちょっといじめすぎたね。間宮飛鳥。合格」
長谷川さんはおもちゃのピンポンブザーを鳴らしながらそう言った。
合格?ほんとに?
俺が?