日常的幸福論~もうひとつの話~
「それで?何しに来たんだ?」
ご飯を食べながら飛鳥は向かいに座っているルイに質問した。
「お願いがあってね」
「お願い?」
「そ。実は次の新曲、少し煮詰まっていてね」
新曲、と聞いてルイの方を見ると先ほどまでワガママ三昧だったルイの顔からアーティスト、ルイの顔つきになった。
「次も恋愛バラードなんだけど、どうしてもイメージがわかないんだ。そこで、」
ルイは飛鳥の方を見てニヤリと笑い、あたしはその顔を見て背筋に悪寒が走った。
「飛鳥と沙依ちゃん、ふたりで新曲のプロモーションビデオに出演してよ」
出演してほしい、ではなく出演してよって言い切ってるあたりやっぱりルイはマイペースだと思った。
「この前、有坂さんの映画にふたりで出演してただろ?あれ見ていいなぁって思ったんだ。創作意欲も沸くし。なっ、協力してよ」
「断る。この前は沙依の顔が出ないから許可したが新曲のプロモーションビデオに確実に顔出しだろ?沙依は見せ物じゃないんだ。悪いが他を当たってくれ」