日常的幸福論~もうひとつの話~
「本当にムカつくわ、あの小娘っ!!!」


後ろからあたしの心の声を代弁してくれるようなセリフが聞こえて振り返る。


「凛子さんっ!!!」


「よっ、沙依。久しぶり」


凛子さんは飛鳥がうちの事務所に移籍する前にいた劇団の先輩。


子役のときから女優業をしていた凛子さん。さっぱりとした性格の姉御肌であたしのお姉さん的存在の人だ。


「撮影に入ってから河村愛理は飛鳥にベッタリよ。飛鳥に抱きつくシーンはわざとNG出して何回も抱きつくのよっ!!」


「えっ……抱き?」


「今回の映画の重要シーンに私情を入れるなんてっ!!男のスタッフはヘラヘラと笑ってるし、飛鳥は飛鳥で何も言わないしっ!!!」


「ちょっと待って!!!飛鳥の役って……」


「あら、聞いてない?高校教師役よ。河村愛理が生徒役」


「凛子さんは?」


「意地悪な女保健医」


長い綺麗な黒髪を靡かせて白衣を華麗に羽織る凛子さん。


に……似合いすぎてる。
< 6 / 124 >

この作品をシェア

pagetop