日常的幸福論~もうひとつの話~
「何分急な話だからね、飛鳥のご両親は今日は来ないんだ。お父さんたちも自己紹介が終わったら席を外すから好きに話なさい」
そんな、彼とふたりきりになって何を話せばいいのよ!!!
もうドキドキして逃げ出したい気持ちいっぱいになったけど、あたしたちを乗せたエレベーターは椿の間があるホテルの最上階へ着いた。
「飛鳥、入るわよ」
お母さんが椿の間の扉を開けて先に入る。
「待たせたね、飛鳥」
「いえ、自分も今来たとこですから」
お父さんの影になってまだ飛鳥の姿が見れないけど、聞き惚れてしまうくらい透明感のある声に心臓が煩いくらい高鳴る。
「ほら、沙依。そんなとこに突っ立ってないで早く入りなさい」
お母さんに呼ばれてあたしも椿の間へ足を踏み入れた。
「はじめまして、沙依さん。間宮飛鳥です」
「はっ!!はじっ、はじめまして!!!飯沼沙依です!!!」
綺麗に笑う彼とは対象的に顔を真っ赤にして噛みながら挨拶するいっぱいいっぱいのあたし。
穴があったら入りたい。
ううん、寧ろ穴を掘って入って一生そこから出てきたくない。