日常的幸福論~もうひとつの話~
「ちょっと沙依。大丈夫?」
「大っ…丈夫、ゴホッ…。ご、ごめん!杏!!急用できたから先帰るねっ!!」
「何かあったの?」
「また、落ち着いたら話すからっ!!」
鞄を片手に持ってあたしは急いで駅へ向かい、飛鳥の家の最寄り駅までの切符を購入して電車に乗った。
電車に揺られること20分と少し。
鏡に穴が開くくらい見ておかしいとこがないかチェック。
飛鳥に会うならもっと可愛い服にすれば良かった。
今日は授業だけで特に予定もなかったから黒のカットソーにデニムスカート、黒のレギンスという、シンプルすぎる組合せ。
せめて、可愛く見られたいとひとつで結んでいた髪ゴムをほどき髪をおろした。
駅に着いて指定された住所を目指す。
駅前のスーパーやコンビニ、薬局が立ち並ぶ通りを抜けながら、飛鳥がスーパーで買い物している姿を想像したら笑えてきた。
小さな公園で遊ぶ親子の姿を横目に住宅地に足を踏み入れると、一際大きなマンション。
黒のお洒落でモダンなデザイナーズマンションの最上階。
そこが、飛鳥の家。