日常的幸福論~もうひとつの話~
外に出ると空の色がオレンジに変わっていて、いつの間にか時間が経っていたのかと驚いた。
飛鳥からの返事。
忘れるわけがない。
ルイに言わなかったのは、あたしと飛鳥の、ふたりだけの思い出だったから。
『好きだ。俺の傍から離れるな』
この言葉を聞いたとき嘘かと思った。
でも飛鳥が真剣だったから、あたしはそっと頷いた。
家に帰って夕飯の仕度していると飛鳥からの電話が鳴った。
『沙依?悪い、撮影が押してるから今夜遅くなる』
「わかった。頑張ってね。あっ、飛鳥」
『ん?』
「好きだよ」
エピソード3・ルイ、現る【完】