日常的幸福論~もうひとつの話~
「うん、旨い」
「本当、美味しい!!」
あたしと飛鳥が口々に料理の感想を伝えるとマキちゃんは安心した顔を見せた。
なんでこんな美味しく作れるのかと聞きたくなるくらいプロの味だった。
「……うち、実家がイタリアンのお店を経営してるんです。幼いころから厨房に立つことが夢で父からたくさんの味を仕込まれました。だけど……」
マキちゃんは飛鳥の方をジッと見つめた。
「飛鳥さんに出会ったんです。飛鳥さんの演技を見て、目が覚める思いでした。これまで自分が信じていた夢を捨ててもいいと思うほど飛鳥さん演技には夢や希望がありました」
あたしは、自分が恥ずかしくなった。
マキちゃんも飛鳥と同じ、真剣に役者の道を歩いてるのに妬きもちなんて。
「マキちゃん、頑張って!!応援するよ。マキちゃんは良い役者さんになるよ、絶対。ねっ、飛鳥!?」
「あぁ、マキはいい“役者”だ」
「ありがとうございます、沙依さん。でも、飛鳥さんほどの役者魂はまだないですけどね?」
マキちゃんはクスッと笑いワインを口にした。