日常的幸福論~もうひとつの話~
冷蔵庫の中に確か入ってたはず。
あった、あった。
飛鳥みたいにマキちゃんに指導することなんてあたしにできないけど、でもほんの少しでもマキちゃんの力になりたいから。
『私はあなたのそばにいたいんです!!』
「マキ。ここのシーンはその表情じゃなくて……」
なんだか行き詰まってる演技指導中にあたしは和室の襖を開けた。
「飛鳥。マキちゃん。ちょっと休憩したらどう?」
「沙依さん?でも……」
マキちゃんは飛鳥の方をちらりと見た。
「頑張るのもいいことだけど、少しは休憩しなきゃ。はい、マキちゃん。飛鳥も」
あたしはキッチンで作ったホットレモンを渡した。
飛鳥も撮影のときにホットレモンを現場に持っていくときがあるから、役者さんにホットレモンっていいのかなって思って。