日常的幸福論~もうひとつの話~





「飛鳥~、夕飯の買い出し行ってくるね」



和室の襖を少し開けて、マキちゃんと台本を読み合わせてる飛鳥に声をかける。




「あぁ、気を付けてな」



「沙依さん、行ってらっしゃい」




「行ってきます!!」




襖を閉めてあたしは近くのスーパーへ向かった。




夕方のこの時間、奥さま方の戦場である特売コーナーでゲットしたお肉と野菜、お豆腐に椎茸、それからしらたき。



今夜の夕飯はお鍋だ。



飛鳥とふたりだとなかなかお鍋も作らないけど、今日はマキちゃんもいるから。やっぱりお鍋は人数が多い方が美味しいしね。




袋いっぱいに入った鍋の具材を両手に持ってマンションへ帰った。




「ただいまぁ」




荷物を持って和室の前を通ると飛鳥とマキちゃんの話し声が聞こえた。



「帰ってきたよ」と言おうと襖を少し開けるとあたしは見てしまった。



嘘だと思いたかった。



飛鳥とマキちゃんが抱き合ってるなんて。



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