日常的幸福論~もうひとつの話~
「今じゃなくてもいいじゃないですか」
「沙依に誤解されたままなんて嫌なんだよ。さっさと脱げ」
諦めたのかマキちゃんはため息をついてブラウスのボタンに手をかけた。
何が起こっているのか全くわからず、呆然とマキちゃんが服を脱ぐ姿を見つめる。
「沙依、黙ってたけどな。マキは男なんだ」
マキちゃんがブラウスを脱ぐとそこには巨乳ではなく、真平らな、というか少し筋肉質の胸板。
「お、とこ……」
「黙っててすみません。沙依さん。俺、槇 孝之っていいます」
まき たかゆき、さん?
「マキって名字だったの!?えっ!?マキちゃん!?マキくん!?女装趣味!?飛鳥ってそっち!?」
「落ち着け、沙依。マキは女装趣味でもないし、俺も男が好きなわけでもない」
飛鳥はパニックになっているあたしに一冊の台本を見せてきた。
「なにこれ?『フヂテレビ新春ドラマスペシャル、瀬川家の庭』?」
「そう、今回マキには俺の演技に協力してもらったんだ」
「えっ?飛鳥が演技指導してたんじゃなくて?」
「それは本当ですよ。沙依さん。俺は飛鳥さんに協力して、飛鳥さんは俺に協力してもらったんです」
マキちゃん、いやマキくんが説明してくれたけどいまいちわからない。