ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
感じる。


今日は私をいっぱい可愛がって。


「あ……」


遠藤さんが声を漏らす。


何かに反応している。


不思議に思って、その瞳をじっと見つめた。


「その唇の色、いいね」


驚いた表情の遠藤さんが私を上から覗き込む。


私の唇に塗られた真っ赤なルージュを見ていたんだ。


私の頬に中指と人差し指で触れてきた。


そして、親指で私の下唇を軽く触った。


「キレイだ」


遠藤さんは、そう呟いた。


この言葉が、胸にジンと響いた。


とても嬉しい。


遠藤さんには「可愛い」と言われるより「キレイ」と言われたい。


ちょっとでも、大人の女に見られたいからだ。


彼と会う時は、この口紅に決めた。


たとえ、他人の口紅でも遠藤さんのお気に入りだから持ち主には返さない。


デートの時は、必ずこのルージュを引くことにしよう。







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