ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
作家なのかもしれない。


そうだとしたら、この人が元彼女ということになる。


葵はトランクス一枚という格好でベッドから出た。


そして、この寝室を出ていった。


二人きりになる。


「ここは懐かしいよ。私はここで暮らしてたんだ。生活の一部だった。このダブルベッド、今はあんたが寝てるけど前は私が寝てたんだ。あの頃は、楽しかったよ」


しみじみと彼女が部屋を眺めながら語る。


やっぱり元カノだったんだ。


ここで同棲していたのかと思うと胸が裂けるような思いがした。


今すぐ私の前から消えてほしい。


「でも、ふられたんだ。それで、やけになって飲み歩くようになった。いつのまにか、ホストにハマってた。それで、金欠病だよ」


「なんで、ふられたんですか?」


私はわざと意地悪な質問をした。


彼女を困らせたかった。


「お嬢ちゃん、ズバッと聞くね」


彼女は大人だった。


不敵な笑みを浮かべるだけで動じることはなかった。


「教えてください」


私は退かなかった。


目を剥いて言い立てる。




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