ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
言い訳のようなことを口にする。


葵が続ける。


「加瑠羅は頭がおかしい。何を言われたか知らない。でも、信じないで。加瑠羅は酔ってたんだ。だから、今日のことは忘れてほしい」


「素面に見えたけど?」


「いや、そんなはずはない」


「加瑠羅さんって私と出会う前に付き合ってた人?」


「そうだよ。薫と出会う直前に別れたんだ。合い鍵を渡したままだった」


葵は落ち着いた口調でそう言った。


「合い鍵は持たせておくべきじゃなかった」


葵がそう言って悔しそうに唇を噛みしめる。


「こんな常識はずれの行動とるなんて、あいつにはまったく呆れるよ」


険しい顔付きで葵が愚痴をこぼす。


「迂闊だった」


そう呟くと葵は顔を両手で覆った。


「おまけに、たかられてるんだ。情けないでしょ? 自分でもこんな自分が嫌になる」


覆ったまま、苦しそうな声で語る。


加瑠羅さんは葵の悩みの種なんだ。


悩んでいるのに慰めの言葉をかけてあげられない。


私は彼女なのに、どうしてあげたらいいんだろう?


葵が両手から顔を出す。







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