ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
優は手を止めた。


花音がカウンターから出てきて私のそば近くまで寄ってくる。


肩を触って「大丈夫?」と尋ねる。


それから、うなだれる私の顔を屈んで覗き込んだ。


「何かあった?」


「うん」


幽かで弱々しい声を発する。


「何があったの?」


「葵が……」


「遠藤さんが?」


「嘘をついて私をだましてた……」


そこまで聞くと、花音は立ち上がって優にこう命令した。


「あんた、邪魔。どっか行って。大事な話があるから」


優を追っ払うと、また屈んだ。


じっと私の瞳を見つめる。


その花音に私は店長から聞いた話を小さな声でポツリ、ポツリと語った。


「あの男! やっぱり!」


花音が立ち上がって激怒した。


「薫を巧みにだましてたんだ!」


花音の怒りは収まらない。





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