ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
胸が引きちぎられたかのように痛くて怒りと悲しみでいっぱいになる。


じわっと涙が出てくる。


熱い涙が頬を伝う。


涙が止まらない。


「お客様、大丈夫ですか?」


コーヒーショップの親切な女性店員がうずくまる私に声をかける。


「お客様、ご気分でも悪くされたんですか?」


「だ、大丈夫です。ごめんなさい」


涙を指先で拭いながら答えると、勢いよく立ち上がって私はコーヒーショップを後にした。


▼ ▼ ▼ ▼ ▼


真っ暗な部屋の中にいた。


ベッドの上で私はじっと俯いて膝を抱えていた。


電気はつけない。


暗い方が落ち着く。


耐えるんだ。


寂しさにも裏切られた痛みにも我慢して耐えるんだ。


今日一日乗り越えたら楽になるだろう。


大晦日には必ず葵が私のもとへ帰ってくる。


お正月からは私が葵を独占できるんだから、しばらくの辛抱だ。


私は葵を裏切られても嫌いにはなれない。






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