ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
服を脱いで裸体になった私が栓を捻ると、シャワー音が静けさを破った。


スタンドシャワーの下に立つ。


お湯を顔から浴びる。


水圧がキツイから顔が痛い。


この痛みを受けている間は、心の痛みを忘れられる。


長い髪を掻きあげる。


身体の汚れを洗い流すのと同時に葵との思い出も洗い流せるような希望が芽生えた。


もうすぐ優が来て私を癒してくれる。


これからのことを想像すると希望は大きく膨らんだ。


シャワーを止めて浴室から出る。


ピンクのバスタオルで身体を拭き終わるとそれを肌に巻く。


長い髪を白いタオルで挟んで叩いたり押さえたりして水分を取る。


それから、髪をまとめて白いタオルで止めた。


洗面台の上の歯ブラシセットを手に取ると、歯を丁寧に磨いた。


湯気で曇った洗面台の鏡を指で触った。


自分の目がくっきり映る。


キュッ、キュッと拭うと歯ブラシを咥えた自分の顔が映った。


磨き終えて止めていた白いタオルを取ると、長い髪が肩や背中にハラリと落ちた。


その髪をドライヤーで乾かす。


乾かしている時だった。




< 207 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop