ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
花音と結婚する社会人の店長とは違う。


「それで、将来プランなんだけど優は看護師になりたいんだって?」


花音がそう言いながら優の方を見る。


看護師になりたいなんて初めて聞いた。


初耳だ。


「ついこの間、ナースマンのドラマを見て俺も看護の職に就きたいなあって思うようになったんだ。無理かもしれないけど働いてみたい」


「じゃあ、学校に入らなきゃね。高校を卒業して看護の学校に入って勉強してって時間かかるなあ。薫、それまで待てる?」


花音に話しかけられて私は当惑した。


そもそも優に頼ってもいいんだろうか?


私は優の優しさに甘えてもいいんだろうか?


優を捨てた私のような女にそんな資格があるんだろうか?


子供を育てていくには優が必要だ。


でも、利用するような気がしてならない。


それに、優を私が縛ってしまうのではないかと不安だ。


妻と自分の子供ではない子供に束縛される人生が優には待っているんだ。


「私は待てる。でも、優は自分の人生を自由に生きた方がいいんじゃない?」


「何、言ってるの? じゃあ、お腹の子はどうするの? 一人で育てていくつもり?」


「うん。それか……」


「それ以上、もう何も言わないで。薫の口からそれは聞きたくないよ」


花音は私が何を考えているのか、わかっていた。






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