ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
一番楽で一番苦しい方法だけれど一番それが現実的で実行されやすい。


特に、私のような経済力のない女子高生にとっては手っ取り早い解決法だ。


何もなかったことにする。


産まないで産まなかったことを秘密にして生きていく。


一人で傷を背負って生きていく。


優には迷惑をかけたくないから子供は諦めた方がいいのかもしれない。


「私だったら学校を辞める。それで赤ちゃんを産んで育てるよ。可愛い赤ちゃんのためなら苦労を厭わない。少々のことなら我慢する。親は説得させる。反対されたら友達を頼る。友達にも反対されたら母子生活支援施設に行くか最悪でも子供を産んで乳児院に預けるよ」


花音がこともなげに話す。


「産んでよかったって思える日が来るよ。いつかきっと努力して育てたら母親も子供も幸せになれる。そう思わない?」


私は花音の言葉に心が揺さぶられた。


花音は続ける。


「もしも薫が嫌じゃなかったら居酒屋で一緒に働こう。夜からだから昼間は子育てができていいじゃない。私が休みの日は薫の子供の面倒見るよ。薫が休みの日は私の子供の面倒見て助け合って育てていくんだよ。協力して頑張ろうよ。人間は一人で生きていけないんだしさ」


言い終わると花音は皿のビスケットを一枚取った。


ビスケットをくわえて少し微笑む。


「そうだね。それがいいよ。俺もそうした方がいいと思う。ただ薫に忘れないでいてほしいことがあるんだ」


優もそう言いながら皿のビスケットを一枚取った。


そして、それを食べながら、こう言った。


「誰にも望まれずに産まれてくる赤ちゃんではなくて俺や花音に祝福されて産まれてくる子なんだから悲観的にならないでほしいんだ。出産する時も応援するから」


花音と優に励まされて私の心は温かい気持ちでいっぱいになった。


恐怖と不安が消えた。













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