ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
「薫の料理はおいしかった。あれ、何だっけ? ほら、あれだよ。あの料理、名前が出てこない。あのハンバーグ」


「肉だんごの照り焼き?」


「そう、それだよ、それ。もう一度あれ食べたいなあ。作ってよ」


「奥さんに作ってもらえば?」


相手の目を見ることなく冷たく切り返す。


「薫じゃなきゃ、ダメなんだ。薫が恋しいよ」


そう言って重ねた手に力を込める。


不愉快になって葵の手を振り払う。


「やめて。もう、終わったんだから。過去は忘れて」


葵のことは大好きだった。


葵に恋したことは後悔していない。


たくさん傷ついたけれど、加瑠羅や夏子さんといった魅力的な人々に出会えた。


それは、自分の人生にとってマイナスではないだろう。


彼女たちから、いろいろと学ぶことができた。


それに、葵から避妊をする大切さも学んだ。


これからは自分が後で困らないように妊娠しないような恋愛をしたい。


避妊しなかったことを悔やむ人生だけは送りたくない。


この経験を経て私は成長したんだ。


そう思いたい。




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