ルージュ　～盲目の恋に溺れて～
マスカラもまぶたに塗ってしまうという失敗を繰り返し、何度もやり直した。


少し自分を落ち着かせようと部屋にお香を焚いた。


それで、精神統一を図ろうとしたものの気持ちはそれでも収まらなかった。


何度も深呼吸してみた。


スーハー、スーハーと新しい空気を肺に送り込み、吐き出す。


人は深呼吸すると落ち着くという。


でも、それさえ効果がなかった。


こんなに心が乱れることなんて今までなかったかもしれない。


デート前に心が弾むことはあっても極度の緊張状態に陥ることはなかった。


今回はデートする相手が同級生ではなく、大人の男性だからかもしれない。


いや、カッコイイ遠藤さんだからかもしれない。


いずれにしても、あんなにカッコイイ大人の男の人とデートするのは初めてだ。


花音が緊張した時、よく「口から心臓が飛び出そう」と言うんだけれど私はその度に、それを大袈裟な表現の仕方だと冷笑していた。


でも、今まさに口から心臓が飛び出そうな状態だ。


だんだん吐き気までしてきた。


軽い吐き気が私を悩ませる。


嬉しいはずのデートが悩みの種になるなんて誰が予想できただろう？


いつから私はこのような小心者になったんだろう？


だいたい、フレンチレストランなんて行ったことがない。


だから、テーブルマナーや礼儀作法などあまり知らない。


















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