ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
きっと、私は顔面が真っ赤になっているだろう。


耳まで真っ赤かもしれない。


マナー本の内容を思い出すんだ。


もう、これ以上どんなことがあっても恥はかけない。


たしか、バッグは左側の床の上に置くんだったっけ?


うろ覚えで不安なまま自分の左にバッグを置いた。


真向かいにいる遠藤さんに目を向けると、白いナプキンを手に取っていた。


そうだった。


ナプキンの膝の載せ方が、ややこしかった。


たしか、二つ折りにしてどちらかを手前に載せるんだった。


どっちだったか、まったく思い出せない。


でも、テーブルの下に隠れているから遠藤さんには見えない。


適当に載せようと思った瞬間に、遠藤さんがコホンとわざとらしい咳払いをした。


「二つに折って輪の方を体につけて膝の上に載せる、わかったね?」


遠藤さんは片方の眉を上げながら、私に向かって確認するかのように尋ねる。


「はい」


縮こまって答えると、言う通りにした。


なんて私は未熟な子供なんだろう。


自分で自分が嫌になる。


本当、情けない。
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