ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
ふと、気付いたらウェイターが前菜を運んできていた。


前菜はタスマニア産のサーモンとウズラの卵だった。


私は外側のナイフとフォークを手に取り、赤いサーモンをフォークで刺してナイフで切って口に入れた。


臭みのないサーモンの味が口の中に広がる。


ウズラの卵も同様にナイフとフォークを使って細かくした。


上品に見えるように口に運ぶ。


遠藤さんは伏し目でワイングラスを唇にあてていた。


その仕草が艶めいている。


長いまつ毛が特に私の心を惑わす。


胸がドキドキし始めた。


私の胸の鼓動が高鳴る。


食べ終わってナイフとフォークを揃えて置いていたら皿は下げられて、次に運ばれてきたのは冷たいかぼちゃのスープだった。



柿色のスープがカップに入っている。


皿に入っていたら飲み方が煩わしい。


でも、この場合はカップなのでテーブルマナーを気にせず飲める。


ホッとしながら、一緒に運ばれてきた小型の丸いスプーンですくって飲んだ。


私より先にスープを飲み終えた遠藤さんは私に優しく微笑んだ。


その微笑に心が掻き乱される。


甘いマスクの遠藤さんに優しい微笑みを向けられると食事どころではなくなる。


スープを飲んでいた手が止まった。



< 42 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop