ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
「昔、スポーツやってたんだ。何だと思う?」


そういえば、花音が言ってたっけ?


遠藤さんは何かスポーツしてたんだった。


「何だろう? わかりません」


「テニスだよ」


「カッコイイ……」


私の声に、ため息が混じる。


ただでさえカッコイイのにテニスをしていたら、さらにもっとカッコよくてモテただろう。


「中学、高校とね。大学では部活ではなく楽なサークルに入ってたんだ」


「遠藤さん、大学はW大学だったんですよね。花音から聞きました。私、狙ってるんです。後輩になるかもしれません」


「そうなんだ。でも、どうして?」


「特に理由ないんです。小説家とか数多く輩出してて有名だからかなあ?」


遠藤さんが話を聞いているそばで、ウェイターが横に立って飲み物のワインをグラスに注いでいる。


それを取ると、遠藤さんは素早くグラスに口をつけた。


目を瞑りながら飲んでいる。


うっとりして見ていると、ふいに目を開けて私を見た。


目が合った瞬間、気持ちを知られたのではないかと思って目を逸らした。


うろたえていると、遠藤さんは落ち着き払った様子でこんな風に語りかけてくれた。


「まあ、有名だからね。僕も有名だから受験したんだよ。入れたらモテると思ったし」


そして、笑いを含んだ顔で遠藤さんはワイングラスを軽く揺らした。





< 45 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop