ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
言い当てられて驚いた私は、手にしていたナプキンでデザートの皿に置いていたスプーンを払ってしまった。
スプーンはカーペットに落ちた。
慌てて拾おうとしたけれど、どこから飛んできたのかウェイターがやって来て「お客様は拾わないでください。それが、エチケットでマナーですから」と言われた。
そのウェイターがスプーンを拾っていなくなると、しゅんとなって、その場にへたりこんだ。
やがて、よろよろとカーペットから立ち上がり、椅子に座ると遠藤さんは「落としても拾わない、それが決まりなんだよ」と小さな声で教えてくれた。
「僕が悪いんだ。君に話してなかったから。ごめん」
心底、気の毒そうな顔で遠藤さんは謝る。
「いいえ。私が悪いんです。バカだから。世間知らずなんですよ。勉強してきたんだけどなあ……」
そんな風に答えて私は、つい卑屈になってしまう。
私は、成績が優れている方だ。
事実、優や花音より勉強は得意な方だ。
それなのに、今日という日は本領を発揮することができない。
たぶん、遠藤さんとのデートにドギマギして集中力を欠いているんだろう。
みっともない自分を曝け出してしまった。
そう思うと、鬱屈した気分が心を支配する。
うなだれているところへ、ピアノの生演奏が聞こえてきた。
視線をあのグランドピアノに向けると、黒いドレスを着た女の人が奏でていた。
黒光りしているグランドピアノはセレブ感が漂っていて、見ているだけで現実世界を忘れさせてくれる。
それに加えて、このメロディーがムードたっぷりなので沈んでいた気持ちが軽くなり徐々に心が晴れていった。
私はピアノの音色を聞きながらロマンチックな気分に酔いしれて、遠藤さんの方に視線を戻した。
スプーンはカーペットに落ちた。
慌てて拾おうとしたけれど、どこから飛んできたのかウェイターがやって来て「お客様は拾わないでください。それが、エチケットでマナーですから」と言われた。
そのウェイターがスプーンを拾っていなくなると、しゅんとなって、その場にへたりこんだ。
やがて、よろよろとカーペットから立ち上がり、椅子に座ると遠藤さんは「落としても拾わない、それが決まりなんだよ」と小さな声で教えてくれた。
「僕が悪いんだ。君に話してなかったから。ごめん」
心底、気の毒そうな顔で遠藤さんは謝る。
「いいえ。私が悪いんです。バカだから。世間知らずなんですよ。勉強してきたんだけどなあ……」
そんな風に答えて私は、つい卑屈になってしまう。
私は、成績が優れている方だ。
事実、優や花音より勉強は得意な方だ。
それなのに、今日という日は本領を発揮することができない。
たぶん、遠藤さんとのデートにドギマギして集中力を欠いているんだろう。
みっともない自分を曝け出してしまった。
そう思うと、鬱屈した気分が心を支配する。
うなだれているところへ、ピアノの生演奏が聞こえてきた。
視線をあのグランドピアノに向けると、黒いドレスを着た女の人が奏でていた。
黒光りしているグランドピアノはセレブ感が漂っていて、見ているだけで現実世界を忘れさせてくれる。
それに加えて、このメロディーがムードたっぷりなので沈んでいた気持ちが軽くなり徐々に心が晴れていった。
私はピアノの音色を聞きながらロマンチックな気分に酔いしれて、遠藤さんの方に視線を戻した。