ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
そうして、コーヒーの液体を見つめながら、静かにため息を吐く。


今のは、まずかったかもしれない。


本能の赴くまま、行動してしまった。


嫌われて当然だ。


「これを飲んだらディナーは終わり。最後だよ。寂しくなるな」


そう言い終えると、遠藤さんは苦笑した。


そして、物悲しい表情でコーヒーをすすった。


遠藤さんの気持ちが見えない。


遠藤さんという人が、霧に包まれてしまったような気がした。


▼ ▼ ▼ ▼ ▼


フロントガラス越しの街灯、車のランプや信号機は光を放っていた。


暗闇を彩る赤いブレーキランプの一つをじっと見据えた私は、助手席のシートにもたれていた。


遠藤さんも車を運転中でまっすぐ前方を見ていた。


遠藤さんの車は白色のセダンで、中はダークブルーで統一されていてシックだった。


特に目に付くものはなく、女っ気がなくて安心した。


店長が言った通り、今のところ彼女はいないようだ。


食事を終えて帰ることになった私を遠藤さんが親切にも自宅まで送ると申し出てくれた。


それで、甘えることにした私は自宅に着くまで大好きな遠藤さんと一緒にいられることになった。


この後の展開が待ち遠しい。


車がこのまま自宅に向かわず、ホテル街を走ってくれたらどんなにいいだろう?


愛する遠藤さんと結ばれることを期待して今にも小躍りしたい気分だった。





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