ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
前を向いたまま、私はハッキリと言葉を放つ。


シートに深く腰掛けていた私は、両手を膝の上で組んだ。


「そう」


素っ気ない口ぶりで遠藤さんは相手が誰か聞いてこない。


私に興味ないんだろうか?


別に私を恋愛対象として見てないんだろうか?


こんなに私は遠藤さんのことが好きなのに、これって一方通行の片想いなんだろうか?


そんなのって惨め過ぎる。


勇気を振り絞って告ったのに相手にされず、ふられてしまったような心境だ。


私は正面の赤いブレーキランプを見つめた。


涙で視界が滲むと、涙がこぼれないように顔を上げて車内の天井を見た。


泣いているのを悟られまいと、天井を見続けた。


早く家に帰りたい。


家に帰ってから声を上げて泣こう。


それから、優に電話して明日呼び出して別れを告げよう。


その辺は、白黒はっきりつけないと胸がモヤモヤして今晩眠れそうにない。


遠藤さんがダメだったから優に戻るなんて器用なこと私にはできない。


ダメでも遠藤さんの方がいい。


たとえ手の届かない存在でも好きでいさせてほしい。


遠藤さんが好きなの。


大好きなの。


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