ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
「それなら、別れたいという意思を本人に伝えた方がいいね」


さらっと軽く遠藤さんが口にする。


いつのまにか涙が引っ込んだ私は首を大きく縦に振った。


「そうですね。明日にでも優に話してみます」


私がそう言い切らないうちに、バッグから変な音が聞こえてきた。


それは、着メロに設定していたモスキートーンだった。


微かに聞こえる音に反応して私はバッグの中から携帯を取り出す。


サブディスプレイには「石川優」という文字が表示されていた。


優からの着信だ。


ちょうど、電話がかかってきたので電話する手間が省けた。


「ちょっと、電話がかかってきたんで話してもいいですか?」


遠藤さんにそう声をかけると、遠藤さんは前向きのまま「うん」と頷いた。


私は携帯電話の通話ボタンを押すと、それを耳にあてた。


「もしもし、優?」


「薫、明日なんだけど会える?」


電話の声は少し、くぐもっていた。


優は、泣いていたのかもしれない。


きっと、別れを予感しているんだ。


「うん。いいよ。どこで?」


「青山のカフェ。2時に待ってる」





< 52 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop