ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
それだけ話すと、プツッと電話の切れる音がした。


とうとう、お互いの関係を終わらせる日が来たんだ。


優とお別れか。


長いようで短かった。


「直接会って話すんだね」


物静かな口調で遠藤さんが私に語りかける。


「はい。明日です。もう終わりにします」


携帯をバッグにしまって返事をした。


フロントガラス越しの景色は見慣れた風景に変わっていた。


車はラブホテルが一軒もない、高層マンションが建ち並ぶエリアを走っていた。


結局、遠藤さんにホテルへ連れ込まれるということはなかった。


期待していたから、ちょっと残念だ。


自宅マンションを見つけると、私は反射的に指差した。


「あれです。あれが私の住んでるマンション」


そう告げると、遠藤さんはハンドルを切ってそのマンションの方へ車を走らせた。


もう今日のデートは終わるんだ。


名残惜しい。


もっと一緒にいたいけれど、わがままは言えない。


そうだ。


携帯のアドレスや番号を聞いていなかった。



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