ルージュ　～盲目の恋に溺れて～
「このまま付き合ってたら、蛇の生殺しか。ここは付き合いを終わらせてって……」


そう言いさして優は伏せていた顔を上げた。


目をすがめて、片目だけ大きく開けていた。


その片目は涙で潤んでいて優はまた、あの時のように泣いていた。


「簡単に別れられない」


そう言い終えると、優は片目から大粒の涙を流した。


間近で見ていると、痛ましい。


私は息を殺して優の次の言葉を待った。


「別れたくない」


優はその言葉を口切りにボロボロ泣き始めた。


みるみる、鼻は真っ赤になり顔面は崩れていく。


気がつけば、優は子供のように声を上げて泣いていた。


嗚咽で苦しそうにしている優を目の当たりにすると、優を切るなんて残酷なことはできなくなった。


こんなに私を好きでいてくれる優を突き放すなんて、とうてい無理だ。


そこまで鬼になることはできない。


遠藤さんのことは好き。


でも、泣いている優を捨てられない。


見るに忍びなくなった私はバッグからハンカチを出して優に手渡した。


「ごめんね。ごめんね、優。これで涙を拭いて。私、遠藤さんに好かれてないから。ただの片思いだから」


安心させようと優を慰める。




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