ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
グラスの水を飲み干すと、カタッと音を立ててテーブルの上にグラスを置いた。


それから、遠藤さんはまた言葉を紡ぐ。


「小説家なんだよね」


「彼女さん?」


「元彼女さん」


「どんな小説を?」


「文学だよ。W大学卒で僕と同じ学校を卒業してるんだ。だからかなあ? 会ってすぐ気が合って仲良くなったのは」


「ふーん。そうだったんですか。才媛なんですね」


「まあね。今となっては懐かしい思い出だよ」


誰にも聞こえないような小声で私たちは顔を寄せ合って会話した。


遠藤さんの顔が近くにあるので少し緊張した。


息がかかりそうになってドキッとした。


それにしても、作家とは一体誰だろう?


あの人かこの人かと頭の中にいろんな名前が浮かぶ。


W大学卒の女流文学作家を今度調べてみよう。


顔がわかるかもしれない。


「さあ、もう出ようか?」


遠藤さんが席を立つ。


「はい」


私も席を立った。
< 76 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop