ルージュ ~盲目の恋に溺れて~
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砂浜が見えた。


前日に雨が降ったせいで砂が泥になっている。


浜辺に一歩、二歩と踏み出して足跡をつける。


先を歩く遠藤さんの後ろ姿を見つめながら歩き続けた。


その背中に抱きつきたい。


自分の欲望を抑えながら太陽の下を歩いた。


潮の香りがする。


海のさざなみの音に耳を傾けて波のうねりに視線を落とす。


近くで見ると、海は違った顔を見せた。


ブルーではなく、エメラルドグリーンだった。


また視線を遠藤さんの背中に向けると、遠藤さんが振り返った。


まぶしそうに目を細めて私を見る。


「気晴らしになった?」


遠藤さんのすぐ前に立って私はこう答えた。


「はい。気晴らしになりました」


「そう。よかった」


遠藤さんは爽やかに笑った。


「ひょっとして私に気を遣ってくれたんですか?」


「彼氏と別れたって聞いて、寂しい思いをしてるんじゃないかと思って」





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