君を救いたい僕ら―愛され一匹狼の物語―

文学部への招待

クラスメートは今日も夏樹に冷たい視線を浴びせている。しかし、良人だけは違った。
「ねぇ、渡会くんって何部なの?」
ニコニコ笑う良人をちらりと見た後、夏樹はぼそっと呟いた。
「…文学部」
返答があったことに少し驚きながら、良人は続けた。
「スポーツはしないの?」
「しないわけじゃないけど」
「僕は前の学校ではコーラス部だったんだよ。でも、ここの学校は女子だけって聞いたから、どうしようかと思って」
悲しそうに話す良人を見て、夏樹は少しいたたまれなくなった。今の時期、どこの部活も部員をとりたがらない。誰かの紹介があれば別だが、転校生の良人にはそのあてもないだろう。
「…文学部来るか?」
「えっ、いいの?」
良人は目を丸くして夏樹を見ている。思えば良人に夏樹から提案するのは初めてだった。夏樹は続けた。
「文学部って言っても文章を書かなくていい。それぞれ趣味を楽しんでる自由な部活だから」
「ありがとう、渡会くん。僕、文学部に入るよ!」

放課後、夏樹は良人を連れて図書室に向かった。
「ここが部室。定例会は週一で、基本的には水曜の放課後。だけど、だいたい毎日集まってるよ」
「そうなんだ」
ガラッと戸を開けると、そこにはすでに三人の部員が集まっていた。
「あれ、渡会くん、その子誰?」
文学部員とは思えない、快活な印象の女性が声をあげた。
「あ、僕は来栖良人って言います」
「入部希望者ですよ」
夏樹が付け足す。
「今の時期ってことは転校生ね?」
「はい、夏休みに引っ越してきたばかりで」
「私は部長の竹内晶。よろしくね」
晶は良人に握手を求めた。
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