君を救いたい僕ら―愛され一匹狼の物語―
帰り道、良人は夏樹の後ろを歩いていた。
「川越先輩ってすごいね。魔術の研究なんて初めて聞いたよ」
「最近は慣れたけど、俺も初めは驚いたな。部長は幼なじみだからって気にしてないけど」
少しずつ夏樹は良人と会話を楽しむようになっていた。そこで良人は話を切り出した。
「あ、あのさぁ」
「何?」
「渡会くんって、いじめられてるの?」
しばらくの沈黙の後、あっけらかんとした声で夏樹が聞き返した。
「そう見える?」
「うん…クラスのみんながシカトしてるから…」
「あいつらが勝手に怒ってるだけだろ?」
「そうかなぁ」
「来栖は気にするなよ。いじめが嫌なら俺と関わらないほうがいい。来栖だっていじめられるかもしれないからな」
「やだ」
良人は即答した。
「関わらないでなんて言わないで」
声を震わせ涙ぐむ良人を見て夏樹は慌てた。
「な、なんで泣いてるんだよ」
「友だちだって、約束したよね?」
「わ、わかったから泣くなって」
夏樹がハンカチを差し出すと、良人は小さく笑った。
「僕、渡会くんのために何かしたいんだ」
「そう」
照れくさそうに夏樹は視線を逸した。
「ねぇ、渡会くんは何を隠してるの?」
しばらく考え込んだ後、夏樹は答えた。
「…もう少し、時間をくれないかな。時期が来たら話すから」
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