君を救いたい僕ら―愛され一匹狼の物語―
「やっぱり渡会くんと森村くん、喧嘩してるじゃない」
パソコンの画面をのぞき込んでいるのは文学部部長・竹内晶。そのパソコンの持ち主は副部長・川越将志だ。
「くくくっ。僕らに隠し事はできないんですよぉ」
「キモい声出すなっ」
晶は将志の頬をつねった。二人がいるのは図書室の奥にある書庫だ。薄暗い書庫には将志が用意した高性能のパソコンが置かれている。それを使えば学校中の監視カメラを盗み見ることも出来るのだ。ちょうど画面には剣道の試合の様子が映し出されていた。
「瀬名結子殺人事件、ねぇ」
「ワタ坊も厄介なことに巻き込まれたなぁ。くくくくくっ」
パソコンを操作すると生徒の名簿が表示された。瀬名結子には赤いペンで要注意と書かれている。
「ずっと気になってたんだけど、なんでワタ坊って呼んでるの?」
「そんなこと、どうだっていいだろう?それより、こんな資料もあるけど、見る?」
将志は晶の質問を無視して書類を取り出した。この事件の捜査資料と思われる書類だ。
「将志、こんな事やっていいと思ってんの?」
「晶が良いと言ってくれるなら、いいことだと思うけど?」
「まったく…」
そう言いながら晶は資料に目を通した。将志は家族・親戚に警察関係者が多い。その立場を利用して資料をコピーしてしまったのだった。
「資料を見るかぎり、渡会くんに犯行は無理だと思うけど」
「だよねぇ。それなのに、なぜか警察の一部はワタ坊を疑っている。おかしいよねぇ」
「私たちも極秘に調べましょうよ。真犯人が見つかれば、川越一族も喜んでくれるでしょ」
「晶がそうしたいなら、そうしましょうかね」

二人は幼馴染であり、小学生の頃から恋人として付き合っている。将志は晶の言うことなら何でも聞いてしまうのだった。
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