君を救いたい僕ら―愛され一匹狼の物語―
その日はちょうど、瀬名結子の誕生日だった。夏樹は良人を誘って結子が亡くなった海浜公園へとやってきた。そこに何か犯人の痕跡がないかと思ったのだ。しかし、何の収穫もないまま夕方になってしまった。

二手に分かれて探していたため、いつの間にか良人の姿は見えなくなっていた。そろそろ帰ろうかと思い、大きな声で呼んでみるが、返答はない。探しまわっていると、海のほうから大きな音が聞こえた。何かが海に落ちたような音。もしやと思い、夏樹は走りだした。
(まさか来栖が落ちたんじゃ?)
無我夢中で走っていると、海辺に警察官の姿が見えた。慌てて夏樹は身を隠した。こんな所で会ってしまったら、また疑われるに決まっている。足音は夏樹が隠れた茂みへと確実に近づいてきた。とっさに走り出すと、先ほど見た警官とは違う男が追いかけてきた。
「待て!」
公園を抜けて自転車に飛び乗ったが、男はパトカーに乗り込んで追いかけてきた。やはり男も警官だったのだ。あっという間に追いつかれ、夏樹は腕を掴まれた。警官は一瞬笑うと、さっと手錠を取り出した。
「やっぱり君が犯人だったんだね」
「え?」
夏樹は戸惑っていた。ただ逃げただけで逮捕されるとは思っていなかったからだ。
「逃げたってことは、やましいことがあるんでしょ。友だちを海に突き落としたのも君じゃないの?」
「俺は何もしてない」
「自分から言っちゃったほうがいいよー。言わないでいると罪が重くなっちゃうからね」
「やってないって」
「いいや。詳しくは警察署で聞くから乗ってよ」
強引な警官は夏樹を車に押し込んで走り出してしまった。

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