君を救いたい僕ら―愛され一匹狼の物語―
警察署の近くでは二人の中学生が様子を伺っていた。
「ちょっと、まだ終わんないわけ?」
「おかしいですねぇ。こんなに遅い時間まで取り調べを続けるなんて」
二人はノートパソコンを覗き込む。
「どう考えても、渡会くんは犯人じゃないわよね」
息巻いているのは文学部部長・竹内晶。今日もまた夏樹の様子を気にして追いかけていたのだ。
「ワタ坊を追いかけていた刑事は二人とも今年の春に配属になったようですね」
またも警察の内部資料を確認しているのは副部長・川越将志だ。
「じゃあ将志もよく知らない人なんだ」
「そうですねぇ。この二人、以前は麻薬絡みの事件なども捜査していたようですよ」
「その二人がなぜ渡会くんにこだわってるのかしらね?」
こそこそと相談しているところに、一人の男が近づいていた。足音に気づいた将志はとっさに晶の口を塞ぎ、体に覆いかぶさった。
「怪しいものじゃありませんよ」
そこに立っていたのは来栖聖人だった。

「来栖くんのお父さんでしたか」
将志は顔を見てすぐにその正体がわかった。
「はじめまして。良人の父で聖人と申します。事件のこと、なにか知っているようですね」
「ええ、まあ」
「私たち、見たんです。知らない人が来栖くんを海に突き落とすところ」
晶は立ち上がり、大声で主張した。
「なるほど、では、あなた達が証言してくれれば夏樹くんは解放されるんですね」
「どうでしょうかねえ…」
将志の表情は明るくなかった。
「なんで暗い顔なんかするのよ」
「僕らは渡会くんと親しくしています。知り合いだから庇っているんだと思われたら、証言も信じてもらえない」
「そんなぁ」
晶がため息を付く。
「でもねぇ…ふふふ…僕に不可能はありませんよ?」
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