君を救いたい僕ら―愛され一匹狼の物語―
「なによ、将志。気持ち悪いわね」
晶は将志の頬を叩いた。
「そんなふうにぶたなくてもいいでしょう。これから僕がワタ坊を助けてあげますよ」

すでに10時を過ぎて、夏樹もあくびをし始めていた。
「まじめに答えろ!」
二人の刑事は相変わらず夏樹を取り調べている。
「やってないこと、答えられないし」
「なんだと?!」
一人が夏樹の胸ぐらをつかむ。その時、部屋の扉が開いた。立っていたのはこの警察署の署長だった。
「署長っ!」
その姿を見て、二人は気をつけの姿勢を取った。
「子どもをこんな時間まで取り調べて、何の意味があるのかね」
「子どもといっても、殺人犯なんです、こいつは」
「何を根拠に…」
署長は呆れた様子で二人を見た。そして、夏樹に立つよう促した。
「帰りなさい。部活の先輩が迎えに来ているから」
「先輩って…まさか…」

警察署の外に立っている晶と将志を見て、夏樹はようやく肩の力を抜くことができた。
「わざわざ、ありがとうございます」
「どういたしまして。私達のおかげで出てこられたんだから、感謝してよね」
晶は押し付けがましく言った。
「どういうことですか?」
「将志がね、署長さんに告げ口したのよ」
「くくくっ。僕に不可能はありませんから」
将志は自分のおじである署長に直接電話をかけたのだ。
「君が犯人でない証拠は、私達が持っているもの」
「隠し撮り映像だがね…くくくっ」
「つけてきてたんですか、俺のこと」
「だって、将志が…」
「僕のせいですかぁ?」
二人は夏樹を家に送り届けると、何か言い争いをしながら帰っていった。
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