【完】キミがいた夏〜Four years later〜
美鈴がいなくなってしばらくすると、渚は自分の周りの人たちに『橘』ではなく『渚』と呼ぶように強要した
喜ぶ者はいても嫌がる者はいない
必然的に後輩は全員『渚先輩』と呼ぶようになり、誰一人苗字で呼ぶ人はいなくなった
もちろん私も同じで…
『綾香、これからは『橘』以外で呼んで』
『え…でも…何て…?』
『何でもいい』
私は特別な存在になりたかったのかもしれない…
後輩で唯一彼を呼び捨てに出来る存在
『じゃあ『渚』って呼ぶ…』
渚はすぐにそれでいいと言って了承してくれた
私はスゴく嬉しかった
少し渚に近づけたような特別を貰った気がして
でもそれは違った
渚にとっての特別なものはいつまでたってもひとつだけ
『橘先輩』
そう呼ぶ人
それ以外は無意味なのだから…