【完】キミがいた夏〜Four years later〜
その大きな音でやっと我に返る
冷んやりとした感触に目を下に向けると、机に置いていたはずのグラスが私の足元まで転がってきていた
目の前には苦痛に顔を歪めた渚の姿
渚の握りしめた拳がガラステーブルに置かれ震えている
私はそんな渚を見ていることも、自分の仕出かしたバカなことを認めることも怖くて
すぐに身なりを整えてカバンを取ると、その場から走って逃げ出していた
バカなことをした
バカなことをした
外はいつの間に降りだしたのか、私の気持ちを表すような冷たい雨
火照った頭と体を一気に冷やして溶かしていく
私の渚への気持ちも洗い流してくれたらいいのに
「…っ…ううっ……」
雨が降っていてよかった
暗がりの中に悲しく響く雨の音が私の声をかき消していく
遠くに見える車の赤いテイルランプだけがやけに滲んで見えた