【完】キミがいた夏〜Four years later〜
俺はそのいつもより雰囲気の違って見えるアンティークの扉にゆっくり手を掛ける
扉を開けると、やっぱりいつもと違う華やかな雰囲気の店内に少し驚いて息を飲んだ
俺もこういう場所に来たことがない訳ではないけれど、精々先輩に連れられて行ったキャバクラぐらいだ
それもしつこく女に絡み付かれてうんざりしたことを思い出す
けれど、雛罌粟-hinageshi-は俺が今まで行ったどの飲み屋とも違う、建物をみた時にも感じた品の様なモノを持ち合わせているような気がした
すぐに扉の近くに立っていた黒服のボーイが俺に向かって話しかけてくる
「いらっしゃいませ」
ガッシリとした体つきに髪をオールバックにしていて隙がない
それとは対照的な優しそうな笑顔
俺よりもだいぶ年上に見える
「お客様はこちらは初めてですね?」
客を全て把握しているのだろうか
いやむしろこんな若い客は滅多に来ないだろうからすぐにわかるのかも知れない
店内は、俺よりずっと年上のサラリーマンや年配の客で賑わっていた