【完】キミがいた夏〜Four years later〜
声の方に顔をあげると、今日もまた和服を着たママがカーテンの向こうからこちらに歩いてくるのが見えた
俺はそんなママに少しバツが悪そうに挨拶する
また来たのかと思われているかもしれない
「…どうも」
「女の子達が裏で大騒ぎよ~」
「え?」
目の前で立ち止まったママに疑問の目を向ける
女の子…?
「あなたみたいな若くてイケメンのお客様がお店に来るなんてまずないからねぇ~
誰があなたの指名を受けるかってケンカまで始めちゃって…ふふっ!」
そう言われてカーテンの方に再び顔を向けると、何人かの頬を染めた女性が顔を出して俺の方をチラチラと見ている
ああ…
なるほどね…
「…やれやれ、店の品格もあれじゃ台無しね…」
ママはそう呆れたように言ってシガレットケースからタバコを一本取り出して動きを止める
「いいかしら?」
この間は勝手に吸っていたのに、今日は仕事中だからか一応聞くらしい
俺は少し苦笑しながら静かに頷いて、近くにあったライターを取ってママのタバコに火を向けた
「あら、ありがとう
あなたホストもいけそうね」
「…ふっ…まさか」
「あら、本当よ?
おしいわ!ここがホストクラブなら口説いてるわ」
ママの軽口にとうとう声を出して笑ってしまった